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Dr's NOTE

2026年8月16日

腰の代表的な疾患、椎間板ヘルニアについて

腰椎椎間板ヘルニアは、自然に小さくなることがあります

「ヘルニアって、一度飛び出したらずっとそのままなんですか?」

外来でもよく聞かれる質問です。

腰椎椎間板ヘルニアは、特に30〜50歳代の働く世代に多い疾患で、男性にやや多い傾向があります。重い物を持つ仕事や、腰を曲げる動作を繰り返す仕事、喫煙や肥満なども発症と関係するといわれています。

ただし、MRIで「ヘルニアがあります」と言われても、必ずしもそれがすべて症状の原因とは限りません。実は、症状がまったくない人でもMRIを撮ると、椎間板のふくらみや突出が見つかることがあります。

そのため、画像だけを見るのではなく、痛みやしびれの場所、筋力、診察所見などを合わせて判断することが大切です。

そして、腰椎椎間板ヘルニアには、ぜひ知っておいていただきたい特徴があります。

それは、時間がたつと自然に小さくなることがあるということです。これを「自然吸収」といいます。

飛び出したヘルニアを体が異物のように認識し、少しずつ分解・吸収していくと考えられています。特に、椎間板が大きく飛び出したタイプや、一部がちぎれて移動したタイプでは、むしろ自然吸収が起こりやすいことがわかっています。

どのくらいで小さくなるの?

もちろん個人差はありますが、早い方では2〜3か月ほどでヘルニアが小さくなり始め、3〜6か月ほどでMRIでもはっきり縮小が確認できることがあります。

一方で、しっかり小さくなるまで半年〜1年、場合によってはそれ以上かかることもあります。

ここで大切なのは、「ヘルニアがなくなる時期」と「痛みが良くなる時期」は同じではないということです。

実際には、ヘルニアそのものがまだ残っていても、神経のまわりの炎症や腫れが落ち着くことで、足の痛みやしびれが先に軽くなることは珍しくありません。

そのため、MRIで大きなヘルニアが見つかったからといって、すぐに手術が必要になるわけではありません。

腰椎椎間板ヘルニアには、どんな治療があるの?

腰椎椎間板ヘルニアの治療にはさまざまな方法があります。

大切なのは、最初から一つの治療方法に決めるのではなく、症状の強さ、筋力低下の有無、ヘルニアの形や大きさ、発症してからの期間、仕事や生活への影響などをみながら治療を選んでいくことです。

まず、多くの方は、痛み止めや神経痛を和らげる薬を使用する保存治療から始めます。

足の痛みが強い場合には、炎症を起こしている神経の近くに薬を届ける神経根ブロックや硬膜外ブロックなどの注射治療を行うこともあります。

こうした治療によって痛みを抑えながら、神経の炎症が落ち着いたり、ヘルニアが自然に小さくなったりするのを待つのが基本的な治療方針です。

注射でヘルニアを小さくする「ヘルニコア®」

腰椎椎間板ヘルニアには、**ヘルニコア®(コンドリアーゼ)**という治療法もあります。

これは通常の痛み止めの注射とは少し違います。

ヘルニアが生じている椎間板の中に薬剤を直接注入し、椎間板の中心にある髄核の水分を減らすことで、膨らんだ椎間板の圧を下げる治療です。

つまり、手術でヘルニアを取り除くのではなく、薬の作用によってヘルニアを小さくし、神経への圧迫を軽くすることを目指す治療です。

ただし、すべての腰椎椎間板ヘルニアに使用できるわけではありません。ヘルニアの形や位置などによって適応が決まるため、MRIなどを確認したうえで治療可能かどうかを判断します。

また、一度使用すると原則として同じ患者さんに繰り返し使用する薬ではなく、アレルギー反応などにも注意が必要です。

「手術はできれば避けたいけれど、薬やブロックだけでは痛みが改善しない」という方にとって、条件が合えば選択肢の一つになる治療です。

手術が必要になることもあります

保存治療を続けても強い痛みが改善せず、仕事や日常生活に大きな支障が続く場合には、手術を検討します。

また、足の筋力が低下してきた場合や、尿が出にくい、排尿の感覚がおかしいといった症状がある場合には、自然吸収を待たず、早めに手術が必要になることもあります。

腰椎椎間板ヘルニアの代表的な手術は、神経を圧迫しているヘルニアを取り除く手術です。

以前から行われている方法に加えて、現在では内視鏡を使った低侵襲手術も行われています。

傷を小さくできる「内視鏡手術」

内視鏡手術では、小さな切開からカメラと専用の器具を入れ、神経を圧迫しているヘルニアを取り除きます。

代表的なものとして、MED(内視鏡下椎間板摘出術)や、さらに細い内視鏡を用いる全内視鏡下脊椎手術(FESS)などがあります。他にもaFESSやUBEといった方法で行う手術法もあります。

従来の手術と比べて皮膚や筋肉への負担を小さくできることが大きな特徴で、術後の痛みや入院期間、仕事への復帰という面でメリットが期待できます。

一方で、ヘルニアの位置や形によっては内視鏡手術が適さない場合もあります。

「内視鏡だから必ず良い」というわけではなく、どの方法で最も安全に神経の圧迫を取り除けるかを考えて術式を選ぶことが重要です。

自費診療という選択肢もあります

最近では、保険診療だけでなく、自費診療として行われる治療について相談を受けることも増えてきました。

施設によっては、特殊なカテーテルを使用して神経周囲への治療を行う方法や、PRP(多血小板血漿)などを利用した再生医療などが行われています。

ただし、ここは少し注意が必要です。

自費診療だから、保険診療より新しい、あるいは効果が高いというわけではありません。

治療によっては、腰椎椎間板ヘルニアに対する効果について、まだ十分な科学的データがそろっていないものもあります。

そのため、自費診療を検討するときには、

「何を目的とした治療なのか」
「自分のヘルニアに適した治療なのか」
「どの程度の効果が期待できるのか」
「どのようなリスクがあるのか」

をきちんと確認することが大切です。

大きなヘルニア=すぐ手術、ではありません

「こんなに大きなヘルニア、本当に治るんですか?」

MRIを見ながら、不安そうにそう聞かれることがあります。

でも実際には、大きく飛び出したヘルニアほど自然に吸収されやすいこともあります。

もちろん、すべてのヘルニアが自然に小さくなるわけではありません。

痛みが強くて仕事ができない方に、「自然に治るかもしれないから半年待ちましょう」というのも適切ではありません。

一方で、MRIの画像だけを見て「大きいからすぐ手術」と判断する必要もありません。

腰椎椎間板ヘルニアには、薬物治療、リハビリテーション、神経ブロック、ヘルニコア®、手術など、さまざまな治療の選択肢があります。

場合によっては自費診療も選択肢になります。

「手術をするか、しないか」という二択ではなく、今の症状に対して、どの治療を、どのタイミングで選ぶのが一番よいのか。

画像所見だけではなく、症状や神経の状態、そして仕事や生活背景まで含めて、その方に合った治療方法を一緒に考えていくことが、腰椎椎間板ヘルニアの治療では大切だと考えます。